漆塗り 屋台, 私信

人の心

 

 

先日早朝、道すがらのとあるバス停。

小学校に入りたてのような小さな男の子が発車するバスに手を振っている光景に出くわしました。おそらく出掛けるお父さんを見送っているのでしょう。お父さんが大好きなんやな、もちろん家はすぐなんやろうけど一人でえらいな、毎日来てるんかな。お母さんはいもうとちゃんと朝ご飯かな。

いろいろ想像しました。心がとても温まりました。

 

幸せな気分が広がるのを感じながらそのあと運転をしていると、朝の関連で数年前の出来事を思い出しました。

ある秋、漆塗りが完成した屋台のお納めの朝。その前の晩から夜通しで夢前のコウバで最終の組み立てをし、目処が立ったので運搬用のトラックを借りに一旦姫路に戻る道中。

ガン!

やってしまいました。信号待ちをしている数十秒、急に意識が落ちてしまいブレーキを踏んでいた脚の力が緩んで前に停車している軽トラックの方に当たってしまいました。

あーーー、、えらいことしてもた、と戸惑いながらもすぐさま飛び降り、その運転手さんに謝りました。

「スミマセン!!」夜明け後くらいの早朝なので前後にはそんなにクルマはいません。

 

「どないしとったん」

「すみません!、寝てしまってました!」

「なんでや?」

「徹夜で仕事してまして、。申し訳ないです。すみません!」

一呼吸置いてその方、

「ほんまか。おれもよう(徹夜)あるわ。たいへんやな。もうええわ。このあとは気ぃつけて行きや。」

なんとそのまま許して下さいました。

浄瑠璃の言葉でしたか、『世は情け』といいます。ひとの寛大さに甘えてばかりいてはいけませんが、このときは本当に助かりました。

 

 

 

日々日常。ええ歳して些事に振り回される情けない自分。落ち着かしてくれるのは私の場合は仕事です。

きょうは日曜なのでカーテンも閉めて黙々と。

心が静かに優しくなっていくのが分かります。

 

人は鏡、万象は我が師。

誰かを想う心。私もたいせつにしていきたいです。