[⇒その2]
[承前]
令和4年3月8日火曜日。
木固めの漆はあんじょうかわいてくれていました。ということで下地付けに入ります。
前にも記した通り、金具が付くところとそれ以外で紫外線による劣化からの段差が出来ていたので、まずはその低い方にだけ嵩上げするイメージで下地を付けました。漆喰との境目は、火灯窓は特に曲線で大変でしたが、入念にマスキングを施しました。
下地は当然堅地です。堅地とは、生漆(きうるし)と地の粉(じのこ)や砥の粉(とのこ)を練り合わせた「漆による下地」です。漆なので硬化後は紫外線以外には耐性があり堅牢です。膠(にかわ)による下地と違い、もちろん水に溶けることもありません。
画像右に菊の金具の痕がありますが、一段高く残っているのが分かります。
三日置いて3月11日。
かわいて(硬化して)くれています。爪を立てて表面をなぞるとカリっとした感触で、こんな跡が付けばOKです。
ところが何本かは硬化不良でした。その数約50本中4本。こんな感じで、
やわっとしています。我々は長年携わっているので触る前から、あ、あかんな、と分かります。上の二枚の微妙な色の差がお分かりになるでしょうか。
硬化不良はやり直し。一旦全部剝がします。
面倒ではあるのですがこれも想定内。むしろ不良が一割以下というのは上出来でした。
その後当該の格子も無事硬化させることが出来、下地付けを重ねていきます。
層を重ねるごとに平滑に整っていきます。最終、化粧錆付け3月18日。化粧錆(けしょうさび)とは目の細かい堅地です。
3月21日春分の日の月曜日、下地研ぎを開始しました。
北側の面にも二枠有ります。こちらもニクい位置にある足場。
3月28日。下地研ぎが完了しました。浅い角度から透かして見ると光って見えるようになりました。
さてこの菱の門の内部を少し紹介いたしますと、
内側の面も漆塗りが為されています。ただ過去の修復ではどうやら手が入ってない様子でした。前述の父の時代の修復でも外面だけだったとのことです。
こちらは格子窓の裏に嵌められる板。漆喰塗りでとても丈夫な造り、一人では抱えられないほどの重さでした。
ここへの入り口は南面の西端にありますが、その傍の柱には歴代の修復記録の銅の銘板が貼られています。
この平成3年度のものが父の修復です。平成15年度は別の職人さんが入られました。
4月6日水曜日。これ以降「塗り」の工程へと進みました。作業前の一枚。二階足場からの天守閣。
開城前で人の姿のない姫路城。役得の眼福でした。
つづく。
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