魚吹八幡神社・天満屋台漆塗箔完成画像集その2



平成19年10月23日16:50、
錺金具師川村さんのお姿も見えます、搬入お預かり直後の一枚。

すべてはここからはじまりました。
魚吹の秋祭りがおわったそのさっそく次の日に天満屋台をお預かりいたしました。

それから丸一年をかけて露盤から泥台までの総漆塗り箔が完成しました。
この項では、その作業終了時の様子、完成画像からご紹介します。

その2では井筒以下をご紹介します。



 井筒・四本柱・座板
通常黒漆と朱漆を使うことが多い平桁は下の段を金箔にしています。
井筒・四本柱ともよく木目が見えるように透き漆を塗っています。
蝋色仕上げです。


勾欄座板は乾漆粉をまいてツヤ消し漆塗り。
座板拡大、分厚く丈夫になります。 




 勾欄・勾欄框


勾欄材質は黒檀、
金具の釘跡で穴だらけだったのを漆の下地をつかって補修、
さらにかつてのおもて面を裏返し、金具痕がない内側を外面にもってくることで、新品の黒檀のような見た目を得ました。


裏返して本来と反対に再び組むことができるということは、造られた大工棟梁の腕が素晴らしかった証拠です。

ただ羽目板彫刻が入る溝だけは融通がきかず少々苦労しました。


丸棒と、二段目・角擬宝珠の外の角材のみ黒檀新調です。








男柱は補修ですが釘跡がまったく感じられません。仕上げは漆の摺り上げで、深みのある半ツヤを得つつ木目残します。
框は11回種類の違う漆・金箔を塗り重ね研ぎ出した変わり塗りです。
ちなみにこの框、材質は欅ですが上面を黒檀と同じように見えるよう工夫して漆を塗りました。

←画像いかがでしょうか、黒檀となじんでいます。



黒檀勾欄、上から。
変わり塗りの勾欄框と蛙股彫刻が乗る框。 四本柱は炭研ぎ時。




それぞれ框下面は朱漆蝋色塗りです。桝組みは下面も総蝋色。




 羽目板彫刻・腰組みの雲彫刻


勾欄に並ぶ羽目板彫刻、雅楽の楽器や鍵がモチーフでした。
上は作業中。 漆を塗りなおし金箔を押し直しました。



枠の部分は漆の下地を重ねてすっきりと整形後漆塗り、研ぎ下ろし磨いて(蝋色)から金箔を施工。











いままでは楽器に透き漆が塗ってありましたが
このたびは周りの雲に赤・青の色漆で彩色することで差別化しました。





腰組みの中に入る雲の彫刻。全金箔だったのを改めプラチナ箔と押し分けしました。
ここも明るく印象を刷新しています。



 蛙股彫刻・腰桝組み


幾度も修復されてきた蛙股彫刻、木の葉っぱは旧い塗り・下地を彫り直し、木地に戻してから塗り箔しました。
右上の松葉に注目。




彩色も色漆を用いました。 勧進帳。
 上記の雲はここに入ります。



腰桝(ます)組みはひとたび旧塗膜をすべて研ぎ下ろして木地まで戻しました。
透き漆のなかでも一番透ける漆を吟味し使用、肘木・桝それぞれの上面は白漆の蝋色塗りです。




 脇棒受け・泥台

脇棒受け、獅子の頭部分はベンガラ漆塗りだったところ彫刻師に彫りなおしていただいて透き漆塗り。欅の木目を活かすことができました。
そして草花の彫りを金箔で浮き立たせ、下部の岩は朱漆の上に透き漆を重ね、背景は赤呂漆を塗り重ねメリハリをつけています。
頭の上に出ていたボルトは埋めています。






磨き前です。
総螺鈿(青貝細工)の泥台、姫路城の石垣のように角にくる貝の形を合わせ一体感をもたせています。









蛙股が並ぶ框に配した青貝細片は3×23ミリを1ミリ間隔で一辺約350枚、
総計約1400枚にもなります。













変わり塗りの框が、重量感のある黒檀勾欄と透き漆塗りの明るい桝組みを繋ぎます。

桝組みの獅子と龍は金箔としました、
これも明るい印象に寄与しています。




 全体像










天井・露盤を残してさきにご納入させていただいた本体と屋根。

このときしか見ることができない何も飾っていない姿です。
平成20年9月15日。





 そして平成20年10月19日、お預かりしてから実に362日。晴天のもと完成式が執り行われ招待いただきました。
川村刺繍さん(絹雅)による圧巻の隅絞り・幕などの衣装が付けられた完成形をはじめて見させていただいた瞬間です。

こんな大改修に漆塗り、塗師(ぬし)として携わらせていただけて大変光栄でした。
天満村のみなさまお世話になりましたことあらためてお礼申し上げます。誠にありがとうございました。





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