漆塗り 屋台

大分の獅子

 

 

先月(3月)初めにお納めした獅子頭の漆塗り修復をご紹介致します。

表題の通り、遠く大分県は豊後大野市からのご依頼で、四つお預かりしました。

 

長年の使用で、木地に数多くの損傷が見られ、まずはその補修と補強に掛かりました。

竹串や経木(きょうぎ:薄く加工された板)を割れている部分や、強度を上げる必要があるところに挿入します。

 

割れは木地本体の木目に沿って入ります。

その割れに対して、割れを経木の厚み分少し拡げた上で、経木を挿入し接着(画像では白く見える線)します。

 

さらに強度を出すために、木目に沿った割れに対して直角に竹串を通します。下画像の赤線で示しているのがその箇所です。

限られた木地の厚みの中に正確に穴を開ける必要があります。

赤線の延長上に見える白い楕円が、挿入した竹串の木口です

 

下の画像、欠損部分(ここでは歯)は接ぎ木をし整形。

 

毛の渦が丸ごと傷んでいるところは、一度平らに整形し、木を足し彫刻。

 

 

 

木地直しが完了し、しっかりと強度が確認できたら下地に入ります。

凹み・歪みを下地で修正。

うちではおなじみ堅地(かたじ)です。

堅地とは、漆と地の粉/砥の粉を練り合わせた、天然材料による下地です。硬化はときに容易ではありませんが、しっかり硬化させられると堅牢です。再補修も容易です。

 

 

 

堅地を何度もつけては研ぐ、を繰り返し、きれいな面が整いますと塗り工程に進みます。

塗りはカシュ―やウレタン塗料を一切使わず、全て100%天然の漆を使用します。

メインの赤と黒、そして金箔の下塗りとして黄色の漆を使い塗り分け。

 

 

 

 

その後金箔を施します。

金箔も漆も使って定着させます。下画像はその硬化のための室(むろ)。

漆は適度な湿度により硬化するので、必要な湿度を得るためこういった室に入れます。

 

 

 

下地・漆塗り・金箔押しが完了すると飾り付け。

このたびは毛植えと耳も新調でした。馬のたてがみと尻尾の毛を使い分け、植えていきます。

 

さて、今回の四つのうち二つの頭は赤い毛とのご注文、はたと困りました。赤い毛がいまの時代入手困難なのです。

赤毛は通例、メインが黒毛の中にアクセントとして少し入れるということはたまにあり、それに必要な程度の量なら何とかなるのですが、

今回のご注文は丸々赤毛。そんなには入りません。

 

思案の末、手持ちの白毛を染めもん屋さんで赤に染めて頂きました。
曰くとても難しかったとのこと。普段は布を染めておられます。

植えている様子。

 

 

 

このような工程を経て完成致しました。

ビフォーアフターを並べます。

 

 

 

 

 

裏面や内側もスッキリと直しました。
応急で付けられていた補強の銅板も問題なく外させて頂きました。

 

 

完成した四つの獅子頭。

大きく傷んでいたので、より修復の度合いが際立ったように思います。

 

 

梱包し、お送り致しました。とても大きな荷物になってしまいました。

ですが、獅子頭はどんなサイズであっても発送が可能です。

遠方からでもご遠慮なく、どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。